みんながいう「バランスのよい食事」って何?
妊娠中、体重増加を指摘され、お医者様に「バランス良く食べること」などと指導された妊婦さんは多いはずです。もちろんわたしもそのひとりで、特にわたしの出産した秋田県内の総合病院は体重管理に厳しいことで有名だったため、真冬でもすごく薄いワンピースに分厚いコートを羽織って健診に通っていました。それでも、どの子の時も14〜16kgの増加はあったので、普通に食べていたら、そのくらい体重が増える体質なのだと思います。特に、3人目の時は絶対に余計なストレスはかけない!と誓っていたので、食事制限までして体重を管理することはしませんでした。
それでも、やはり臨月近くになると、グッと増えるので看護師さんも「少し気をつけてね」とご指導してくださり、その際に「バランスよく食べるように」とのひと言が必ずあるんですよね。
でも、この「バランス良く食べる」ってよく聞く言葉だけど、どういう意味か理解している人はあまりいないかと思います。実際、栄養の勉強を2年間してきたわたしでさえ、はじめは自分のこととして置き換えることができていませんでした。
1.「バランス」とはコマが上手に回ること
栄養士やお医者さんが言う「バランス」というのは、コマが上手に回る事をいいます。このコマとは「食事バランスガイド」と呼ばれるもので、何をどれだけ食べればいいのか、具体的な目標を示したものです。この食品の集まりを、水やお茶などの水分を軸にしながら運動によってクルクル回し続けることで健康なカラダを維持することを示しています。
この時、一番上の主食(お米やパン、めんなど)が大きくなりすぎたり、果物や乳製品などの部分が少なくなりすぎたりすると、コマはバランスを崩して倒れてしまいます。このような食習慣を続けていると、いずれあなた自身のカラダもバランスを崩して病気になったり倒れて寝込んでしまったりということになるわけです。
しかし、この食事バランスガイド、あらゆる場面で用いられて見たことがある人も大勢いるのに、活かせている人はほとんといないのではないでしょうか?
わたしが素直に疑問に思うのは、示される「一皿」のカテゴリーが人によって違いすぎるのではないか、という点です。例えば主菜のハンバーグステーキは、ソースをかけるかけないによって摂取する脂肪分や塩分は大きく異なるし、野菜をまぜる、豆腐を混ぜるなど中身によっても得られる栄養素は違います。また、大雑把に一人分としても小食の人の一人分と大食いの人の一人分とは違いますよね。このあいまいさが、栄養の知識の少ない一般の方たちが「これを参考にやってみよう」という気持ちになりずらくさせているのだと思うのです
ですから、わたしたち栄養士は「バランスよく食べてくださいね」を、「理解しない人が悪い」という説明不足、説明力不足の免罪符にしてはいけないし、もっともっとあなたの生活に近い目線で分かりやすくお伝えしなければいけないなと日々反省しています。
2.覚えてほしい「まごたちにく やさしいわ」
さて、じゃあ、どうやったら簡単に「バランスのよい食事」を揃えることができるでしょうか。
そのキーワードが「まごたちにく やさしいわ」です。え?「まごはやさしい」ではないの?と疑問に思ったかもしれませんね。健康な食事のために必要な食材を示した「まごはやさしい」は有名ですが、実際には、この7つの食材だけでは、必要な栄養素が足りません。そこでわたしが考えたのが「まごたちにく やさしいわ」。
ま:まめ(大豆製品)
ご:ごま(ごま、ピーナッツなど種実類)
た:たまご
ち:チーズ(乳製品)
に:にく
く:くだもの
や:やさい(淡色野菜と緑黄色野菜)
さ:さかな
し:しいたけ(キノコ類)
い:いも
わ:わかめ(海草類)
コマの中身を覚えなくても、この呪文をせっせと唱えていけば、自然と栄養が満たされていきます。ただ、上でお話したように、これをどれだけ食べればいいのかは人それぞれ違います。同じ女性でも年齢や体格、運動習慣によって様々です。産後ママなら授乳をしているかどうかも大きな違いです。これに関しては、ご相談いただければ具体的な数字をお伝えします。
この「まごたちにく やさしいわ」で大事なポイントは、必要なたんぱく質が全て入っているところです。わたしたちのカラダには、大豆製品、卵、乳製品、肉、魚というたくさんのたんぱく質が必要ですが、肉や魚一方に偏っていてもいけません。動物性と植物性を過不足なく食べる事によってはじめて、必要なたんぱく質量とそれに付随するビタミンやミネラルが得られます。
3.一飯一汁を基本に
とはいえ、最初から「まごたちにく やさしいわ」を揃えるのは難しいと思いますので、時間がない、料理が苦手などの場合は、まずはごはんとみそ汁を揃える「一飯一汁」からはじめることをオススメします。3食ご飯を揃えたら、例えば、朝は納豆と卵、昼は肉、夜は魚というようにご飯に合う主菜を選びます。そして、みそ汁の中に野菜と豆腐、海藻、キノコなどをいれてしまえば、「まごたちにく やさしいわ」の大半が摂れるのです。あれもこれもと準備をしたり、母親なんだから一汁三菜にしないと!など気を負う必要はありません。むしろ、一飯一汁+果物やヨーグルトなどという献立のほうが、子どもも簡単に食事を済ますことができます。
子どもが大きくなり、余裕ができてきたら、みそ汁の中の具材を減らし、キュウリとワカメの酢ものにしてみたり、にんじんとごぼうできんぴらにしてみたりと、レパートリーの幅を広げていけばいいのです。
妊婦健診や健康診断で、医師や看護師、栄養士に「バランス良く食べてね」と言われたて困ってしまった時は、「まごたちにく やさしいわ」と「一飯一汁」を思い出してくださいね。